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健康日本21策定の経緯

21世紀における我が国の健康寿命の延伸等のための計画づくりについて検討するため、平成10年11月、公衆衛生審議会の了承を得て、多数の有識者や専門家からなる「健康日本21企画検討会」及び「健康日本21計画策定検討会」を設置し、約1年半にわたって検討が重ねられてきました。

そして、その成果が「健康日本21企画検討会・計画策定検討会報告書」としてまとめられ、この中で、“21世紀の日本を、すべての国民が健やかで心豊かに生活できる活力ある社会とするために、「一次予防」に重点を置いた対策で、健康寿命の延伸を図ることを目指す”ことが明言されています。

そして、第3次国民健康づくり対策として、平成12年3月31日に、厚生事務次官より各都道府県知事に宛てて「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)の推進について」通知文が送付され、健康日本21がスタートしたのです。

これまでの健康づくり対策と現在の課題

我が国では、これまでに昭和53年からの第1次国民健康づくり対策(健診の体制の整備が1 つの特徴だった)、昭和63年からの第2次国民健康づくり対策(栄養・運動・休養のバランス、とくに運動の部分がこのときの特色だった)と、国民の健康づくりのための基盤整備等を推進してきました。

その結果、日本の平均寿命は、生活環境の改善や医学の進歩により、世界有数の水準に達しています。しかし、急速な高齢化とともに、生活習慣病の割合は増加しており、これに伴って、要介護者等の増加も深刻な社会問題となっています。

「平均寿命」と「健康寿命」

厚生労働省が平成25年5月に発表した資料によると、平成22年の「平均寿命」は男性で79.55歳、女性で86.30歳です。

しかし、日常生活に制限のない期間を表す「健康寿命」は男性70.42歳、女性は73.62歳で、「日常生活に制限のある期間」を表す「平均寿命」と「健康寿命」の差は男性で9.13年、女性で12.68年となっています。

この「平均寿命」と「健康寿命」の差を平成13年と比べると、男性は8.67年でしたから0.46年の延び、女性は12.28年でしたから0.4年の延びとなっており、このままでは今後さらに「日常生活に制限のある期間」が延びていくことが予想されています。

「平均寿命」の延び以上に「健康寿命」を延ばすことが我が国の課題となっているのです。

生活習慣病対策の重要性

厚生労働省が平成25年3月に発表した資料によると、高齢化の急速な進展に伴って、疾病全体に占めるがん、虚血性心疾患、脳血管疾患、糖尿病等の生活習慣病の割合が増加し、死亡原因では生活習慣病が55.8%を占めています。

生活習慣病の中でも、特に、心疾患、脳血管疾患などの動脈硬化性疾患につながる糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの有病者やその予備群が増加しています。

また、その発症前の段階であるメタボリックシンドロームとその予備群を合わせた割合は、40~74歳において、男性では54.1%(2人に1人)、女性では19.6%(5人に1人)に達しています。

糖尿病、高血圧症、脂質異常症等の発症、あるいは重症化や合併症への進行の予防に重点を置いた取組が重要であり、喫緊の課題とされています。

健康日本21は第2ステージへ

その後、平成15年には、健康増進法(平成14法律第103号)の成立に伴い、同法第7条に基づく「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」が厚生労働省により定められました。

「健康日本21」の運動期間は平成24年度まででしたが、運動開始10年後の平成22年度をめどにした具体的な目標値が提示されていたため、まずは平成19年4月に中間評価報告書(厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会)がとりまとめられ、そして平成23年3月から「健康日本21評価作業チーム」によって最終評価が取りまとめられ、平成23年10月に公表されました。

これに基づき「健康日本21」が平成24年7月10日に全部改正され、平成25年4月1日から「健康日本21(第2次)」が新たにスタートしたのです。

「健康日本21(第二次)」の新たな基本方針

平成12年から始まった「第3次国民健康づくり対策(健康日本21)」(以下“1期目”)が平成24年度末での終了に伴い、これまでの取組の変遷に十分留意しつつも、新たな健康課題や社会背景などを踏まえながら次期の対策に取り組む必要がありました。

そこで、平成23年3月から計6回に亘って行われた評価作業によって1期目の最終評価をとりまとめ、それを踏まえて平成25 年度以降の2期目の推進に向けて、10年後を見据えた目指すべき姿・方向性が示されました。

そして、平成24年7月10日に厚生労働大臣より、健康増進法に基づいた「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」の全部改正が告示され、「二十一世紀における第二次国民健康づくり運動[健康日本21(第二次)]」(以下“2期目”)として、平成25年4月1日から適用されています。期間は平成34年度までです。

健康増進を推進するための5つの基本的な方向

1.健康寿命の延伸と健康格差の縮小

全ての国民が共に支え合いながら希望や生きがいを持ち、ライフステージに合わせた、健やかで心豊かに生活できる活力ある社会の実現を目指し、1期目から示されていた「健康寿命の延伸」と、新たに2期目から示された「健康格差の縮小」がテーマとなっています。

2.生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底[NCD(非感染性疾患)の予防]

禁煙、健康な食事、身体活動の増加、リスクを高める飲酒の減少など「個人の生活習慣改善」により多くの疾患が予防可能とされ、国際的な死因の約60%を占める、がん、循環器系疾患、糖尿病、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の主要な4つの生活習慣病を国際的な背景を踏まえて、NCDという枠組みで捉え、その対策と予防、管理を行っていくことが示されました。

3.社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上

「個人の生活習慣改善」はまた、自立した質の高い日常生活を促進し「健康寿命の延伸」を可能にすることから、子どもの頃からの健康な生活習慣づくりに取り組むこと、また、働く世代のメンタルヘルス対策など「こころの健康づくり」に取り組むことといった、乳幼児期から高齢期まで、それぞれのライフステージにおいて、心身機能の維持・向上につながる対策に取り組むことが示されました。

21世紀は「こころ」の時代とも言われています。さまざまな知識が積み上げられ、メンタルヘルスに生かされていくことでしょう。

また、「社会環境の改善」により、健康のための資源(保健・医療・福祉などのサービス)へのアクセス改善と公平性を確保し、それが社会参加への機会増加ももたらすという、社会環境の質の向上を図り、「健康格差の縮小」につなげたい考えが示されています。

4.健康を支え、守るための社会環境の整備

個人の健康は、家庭、学校、地域、職場等の社会環境の影響を受けることから、社会全体として個人の健康を支え、守る環境づくりに努めていくことが重要であるとし、1期目では、「個人の生活習慣改善」が主なテーマでしたが、2期目では新たに個人を取り巻く「社会環境の改善」が盛り込まれ、車の両輪として改善するべく具体的に取り組んでいくことが示されました。

これは、禁煙対策を例にすると、これまでに公共施設での喫煙が禁止されたり、タバコの箱に喫煙の有害性を明示されたり、税金を増やして購入価格があがったりなど、社会環境によって、生活習慣病にかかるリスクを上げるといわれる喫煙を抑制するという取り組みがなされ、一定の成果があがっているようです。

これと同じように、栄養面や運動面、休養面などにも、国民全体の健康増進に向けてより望ましい社会環境整備が進められていくことでしょう。

5.栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善

上記4つの基本的方向の実現に向けて、生活習慣の改善を含めた健康づくりを効果的に推進するために、ライフステージや性差、社会経済的状況等の違いに基づき区分された、対象集団ごとの特性やニーズに合わせた生活習慣改善への働きかけを重点的に行うとともに、社会環境の改善に向けて、地域や職場等を通じて国民に対し健康増進への働きかけを進めるとしています。

セグメント化された集団に対する働きかけも1期目との大きな違いです。各集団別の課題に合わせた取り組みにつながり、より効果的な改善に向かうことが期待されます。

まとめ

健康日本21が2期目を迎えるに当たり、1期目を踏まえた検討により、1期目からのテーマ「健康寿命の延伸」と2期目から新たに示されたテーマ「健康格差の縮小」に向けた取り組みが始まっています。

新たな健康課題として、国際的な死因の約60%を占める、がん、循環器系疾患、糖尿病、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の4つの生活習慣病の対策と予防が重要視されています。

そこで上記の主要な4つの疾患を、NCD(非感染性疾患)という枠組みで捉え、その対策と予防、管理を行っていくことが示されました。

また、1期目では「個人の生活習慣改善」が主なテーマでしたが、2期目では新たに個人を取り巻く「社会環境の改善」が盛り込まれ、車の両輪として改善するべく具体的に取り組んでいくことが示されています。

すでに、2期目よりセグメント化された集団別に、その特性やニーズに合わせた取り組みがなされ始めています。

10年後を見据えた、2期目の成果に向けて、研究者を始め、現場の医療・保健、栄養、運動の各方面の専門家・従事者らが「健康寿命の延伸」と「健康格差の縮小」につながる活動を全国で展開しています。

平成26年11月30日更新
平成28年12月5日更新

文献

厚生労働省ホームページ
健康日本21ホームページ
健康運動指導士養成講習会テキスト上:(財)健康・体力づくり事業財団
健康運動指導士更新必修講座テキスト:(財)健康・体力づくり事業財団
健康長寿社会を創る―解説 健康日本21(第二次):(財)健康・体力づくり事業財団

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