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ロコモティブシンドロームとは

健康寿命を縮める原因として注目を集めるようになっているロコモティブシンドローム(以下ロコモ)。運動器症候群とも呼ばれ、運動器に生じた障害によって体を思うように動かすことができなくなり、最終的に寝たきりや要介護といった生活を余儀なくされてしまう症状のことです。

認知症、メタボリックシンドロームと並んで健康寿命を縮める三大要因とも言われています。

運動器とは、身体運動に関わる骨、筋肉、関節、神経などの総称です。運動器はそれぞれが連携して働いていますから、どれかひとつの機能が低下すると他の機能にも影響が出てしまい、体はうまく動きません。

この運動器とは日本臨床整形外科学会によると、“骨・関節・靱帯、脊椎・脊髄、筋肉・腱、末梢神経など、体を支え(支持)、動かす(運動・移動)役割をする器官の総称”とのこと。その運動器の障害が要介護のリスクを高めるのです。ここで「障害」とは、1回の外力によって起こるものではなく、繰り返される外力によって起こるものです。

体内には多数の運動器があります。骨格だけでも体内に200以上あり、複雑に組み合わさって成り立っています。筋肉や神経など他の運動器を含めれば途方もない数になるでしょう。

ポイントはこれらの器官は独立しているのではなく、複雑に絡み合い、影響を与え合っている点。そのため、ひとつの機能に障害が生じると広範囲にまで影響を及ぼします。それは体だけでなく、脳や精神面にも及ぶとも言われており、ロコモティブシンドロームと認知症との関連も指摘されるようになっています。

原因は加齢だけなのか?

運動器の機能低下を、何となく「年をとってしまったから仕方がない」と加齢のせいにする声をよくお聞きします。確かに、加齢とともに少しずつ低下してはいくのですが、多くの場合、ただ単に使っていないだけということがほとんどです。ですから年齢はあまり問題視しすぎないようにしたいものです。

人間の体は、使う機能は維持・向上し、使わない機能は低下します。つまり、使うにしても使わないにしても、人間の体はそれぞれの環境に適応していくということなのです。つまり、ロコモは高齢者だけの問題ではないということですね。

50代以上の50%が該当する?!

50歳以上の女性の50%がロコモに該当するだろうという調査があります。今の50代の方が10代・20代のときは、今ほど生活が便利ではなかったでしょうから、日常生活で足腰を使うことが、今より数段多かったはずです。その方たちが50歳をすぎて運動器の機能低下が問題視されています。

一方で、現在の10代・20代の人たちは、50代の方々が10代・20代のころと比べて、格段に足腰を使う機会が少ないはずです。しかも、特に女性はダイエットブームによって痩せ傾向が強いですから、ロコモになる可能性は非常に高いです。しかも、それが早期に、さらに深刻な状態で起こる可能性も秘めています。

動かさないという生活習慣が元で、ロコモは徐々に気づかないうちに進行していきます。そのため、痛みがきっかけでようやく気づくことが多く、その時にはすでに痛みの連鎖が起こるような重い状態で、その痛みにずっと悩まされ続けることになる患者さんが多いとか。

ロコモもメタボと同様です。やっぱり予防が一番。できるだけ早い段階で、使っていない機能を使うような生活習慣を意識的に身につけて、いつまで健康で充実したライフスタイルを送る人たちであふれる世の中であってほしいと願います。

ロコモのよくある症状

初期段階では階段を手すりなしで上り下りできなくなる、横断歩道を青信号の間にわたりきれなくなるといった移動能力が低下する症状が見られます。また、よくある症例・事例では買い物がつらくなったというケースが見られます。重いものを持ち運ぶのが難しくなってしまうからです。

この段階がさらに進むと体を動かすのが億劫になり、引きこもりがちな生活になってしまい、さらに体力が低下してしまいます。すると、転倒などによる骨折や外傷といった問題が起こりやすくなります。

その結果、体を動かす機会が極端に減り、それが運動器の機能をますます低下させてしまうという悪循環に。そして最終的には寝たきりとなって要介護状態に陥ってしまうのです。

運動器障害に陥る2つの原因

「運動器の障害」の原因について、日本臨床整形外科学会は、以下の2つをあげています。

  1. 1)運動器自体の疾患(筋骨格運動器系):変形性関節症、骨粗鬆症に伴う円背、関節リウマチなど。
  2. 2)加齢による運動器機能不全:筋力低下、持久力低下、反応時間延長、運動速度の低下、巧緻性低下、深部感覚低下、バランス能力低下など。

運動器が正常に機能し、動いているからこそわたしたちは思うように体を動かし、移動したり運動したりすることができるわけですが、残念ながら若い頃は当たり前のように動いていたこれらの器官は加齢によって少しずつ衰えていき、少しずつ機能が低下していってしまいます。

その結果、特に足腰の衰えにより、自らの体重を支えることができなくなると、日常生活や自立した生活が困難になり、最終的には寝たきり、要介護状態に至ってしまうのです。

自覚症状なしに進行する運動器の機能低下、運動器を使わないような非活動的な生活を送っている方は、今も静かに進行していることでしょう。誰もが望まない要介護状態にならないためにも、早期に自覚し気づいた一人ひとりが早期予防に努めたいものですね。

ロコモ予防・改善のための筋トレ3つの注意点

ロコモティブシンドロームを改善する方法としてさまざまな運動方法が提唱されています。高齢者の場合、加齢による衰えが原因になることが多いため、とにかく体を動かす習慣が必要です。ただ、ロコモそのものは40代から発症するケースも見られます。予防のためにはより積極的な対策が求められ、そんな対策・改善方法として有効なのがレジスタンストレーニング(以下筋トレ)です。

なぜ筋トレが必要なのか

どうして筋トレがロコモ予防・改善につながるのでしょうか。それは運動器の機能向上に直接つながるからです。筋力の低下そのものが運動器機能を損ねる原因にもなります。それを適度な負荷を与えながら動かすことで鍛え、維持することで健康な体を維持できるのです。

最近では筋トレによる基礎代謝の向上がダイエットに役立つことが知られるようになり、美容、あるいはメタボリックシンドローム対策などに積極的に役立てられるようになっています。その効果は美容やメタボ対策だけでなく、運動器機能向上に直接つながる筋トレは、ロコモにとって一番役立つものです。

体を動かす機会がほとんどない方は、最初のうちはそれほどハードなトレーニングでなくても筋トレ効果は得られますから、自分でもできそうな方法を試してみてはいかがでしょうか。

筋トレ実践3つのポイント

ただし、以下の基本的な事柄は押さえて実践しましょう。

  1. 1.可動域をできるだけ大きく使うこと(不快感のない範囲で)
  2. 2.個人に合った適切な運動強度で行うこと(ややきついと感じる強さで)
  3. 3.拮抗する筋肉とのバランスに気をつけること(日頃の習慣で得意な方向ばかり動かしがちに)

もし、ロコモが進行してすでに痛みが現れているようでしたら、闇雲に筋トレをすればむしろ悪化することも。その時は、まずは整形外科での診断と治療が優先されるべきです。そして、運動の許可が得られたら専門家の下で筋トレに取り組むとよいでしょう。

ロコモ改善事例

77歳男性の例

読売新聞の記事によると、とある医院のリハビリ室でトレーニングに励んでいる77歳の男性は、握力が落ち、趣味の釣りの竿がしっかりと握れなくなったのがきっかけで、週に3回、1回あたり約1時間のトレーニングを継続中。その内容はトレーニングバイクをこいだり、片足立ちをしたりと簡単な運動。通い始めた頃はタオルを絞れなかったり、箸を落としてしまったりということもあったものの、今では握力が38・2キロにまで改善したとのこと。

87歳女性の例

また約6年前から同医院に通っている87歳の女性は、股関節の痛みでつえなしでは歩けなくなり、30年以上続けていた民謡も、まともに踊れなくなったそうです。でも、通院してトレーニングするうちに症状は改善され、現在、つえはほとんどかばんにしまったまま。毎週1回、必ず民謡教室に顔を出し、仲間と旅行に出かけることも多くなったということです。

週1回以上のトレーニングによる改善例

同医院では2007~11年にロコモに該当するとされた人で、ロコトレを週1回以上した人の症状がどれくらい改善したかを調査したところ、初診の際、要介護度が要支援1だった85人は1年後に75・3%、3年後には77・6%が改善または維持できたそうです。また、要介護1と認定された人でも8人のうち1年後に4人、3年後には7人が要支援に改善したそうです。

これらのように、深刻なロコモの症状から改善した症例・事例も見られます。適切な運動を取り入れること、外出の機会をできるだけ増やすこと、あるいは適切な治療を続けることなどで運動器の機能改善が可能です。決して取り返しのつかないものではありません。

正しい知識に基づいて、早期から対策を始めて健康寿命を延ばし、末永く健やかに人生を楽しみましょう。

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