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はじめに

厚生労働省が発表した、平成22年国民生活基礎調査1)によると、

病気やけが等で自覚症状のある者(有訴者)は、(中略) 症状別にみると、男では「腰痛」での有訴者率が最も高く、次いで「肩こり」、「鼻がつまる・鼻汁が出る」、女では「肩こり」が最も高く、次いで「腰痛」、「手足の関節が痛む」となっている。

として、肩こりを訴える国民の割合が男性で約6%、女性で約13%と報告されています。

広辞苑によると、「肩こり」とは“肩がこること”とあり、「こり」とは“筋肉が張ってかたくなること”とあります。さて、この肩こりすなわち肩の筋肉が張ってかたくなる原因はいったい何でしょう?

肩の不調の原因

黒田ら2)によると、肩に痛みが出てしまう原因として、

  1. 猫背などに代表される姿勢の問題
  2. 肋骨、鎖骨の動きが出にくい
  3. 回旋腱板(肩のインナーマッスルと呼ばれる筋肉群)の働きが弱い
  4. 筋肉どうしの役割分担がうまく機能していない

などが挙げられています。

「1.姿勢の問題」となると、筋肉のアンバランスによる骨盤の傾きや、 土台となる足のアライメントなど、全身を見て改善を考える必要があります。

このレポートでは、みなさんがすぐに実践できて、普段あまり意識することがないであろう 「2.肋骨・鎖骨の動き」について調べたことをまとめてみます。

肋骨と鎖骨の動きを出すためには

まず、菅谷3)によると、上肢の動作をスムーズに行うためには、

肩甲帯の運動(鎖骨の動きと肩甲骨の動き)、さらには胸郭の動きが不可欠

と述べています。

肩を動かすというと、いわゆる肩関節だけで(腕の付け根を中心にして)動かしてしまいがち。実際の運動現場で多く見受けられます。

次に、蒲田4)によると、

利き腕側の胸郭が挙上すると肩甲骨の動きを助けて肩の動きがスムーズになります。

と述べています。

肋骨の動きも意識したほうが、もっと肩の動きが大きく滑らかに、指先がより遠くに伸びるということにもつながりますね。

さらに、蒲田4)は、

これ(胸郭の挙上)をスムーズに出すためには、下位胸椎を反らせるとよいのです。

と述べています。

実際に背筋を伸ばした方が(胸椎が反る動き)、胸を引き上げやすいですよね。 胸椎の動きが肋骨の動きを助けていることがわかります。

そして、平沼ら5)によると、

下位胸郭が左右対称に横径拡張することにより、正常な胸椎の伸展が得られる。

と述べています。

肋骨を含めた胸郭は呼吸に合わせて動くことが知られていますが、息を吸い込んだときには、肋骨の下部が正面から見ると左右にひろがる動きをみせます。

肩の動きを滑らかにする3つのポイント

以上のことから、肩(肋骨・鎖骨の)の動きを滑らかにするためには、

  1. 肋骨の下部が左右対称に横へひろがることで、
  2. 胸椎の下部が反らせやすくなり、胸郭が挙上しやすくなる。
  3. その上で鎖骨・肩甲骨から肩を動かす。

という3つのポイントにまとめられます。

滑らかに肩を動かす方法

それではここで実践してみましょう。

現在の肩の動きをチェック

  1. 肩の痛みはありませんか。
  2. 動かしやすさはいかがでしょうか。
  3. 左右で違いはありませんか。

胸郭の動きをチェック

  1. 両手をおへその高さぐらいで肋骨に両側から当てたまま深呼吸をします。 横に広がる動きが感じ取れるでしょうか。(鏡で実際に動きを見てもいいですね)
  2. 胸郭が横にひろがるイメージをしながら繰り返してみましょう。 肩が動かしにくい方は横に拡がる動きがあまり感じられないかもしれませんね。 (逆に息を大きく吐くとしぼむのが感じ取れるのでは。) あわてずに繰り返しましょう。徐々に動きが回復してくると思います。
  3. 肩の痛みや動きは改善されているか、再度チェックしてみましょう。

平成28年2月16日更新

平成29年2月5日更新

出典・引用文献

1)大臣官房統計情報部社会統計課国民生活基礎調査室 Ⅲ世帯員の健康状況 1自覚症状の概況 『平成22年国民生活基礎調査の概況』 平成23年7月12日 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa10/3-1.html

2)黒田善雄監修 三木英之、蒲田和芳、小倉孝一、高田秀臣、藤牧利昭著 『手軽な運動で腰・ひざ・肩の痛みをとる』 講談社 2001

3)菅谷啓之 『アスレティックトレーナー専門科目テキスト 第2巻 運動器の解剖と機能』 日本体育協会 2007

4)蒲田和芳 運動学的特性を理解して行う胸郭コンディショニング 『トレーニングジャーナル2010年2月号』 ブックハウスHD 2010

5)平沼憲治、岩﨑由純監修 蒲田和芳編 『コアセラピーの理論と実践』 講談社 2011

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