週1回のスポーツ実施率
令和3年2月25日に発表された、スポーツ庁が行った世論調査7)によると、回答した20,000件の内、この1年間の週1回の運動実施率は、成人で59.9%。国民の半数以上の方は、定期的に何らかの運動・スポーツに取り組まれているようです。
また、数ある運動・スポーツ種目の中で、トレーニングをこの1年間に行った人の割合が全体で16.9%(男性:19.1%、女性:14.7%)だったとのことです。これは、ウォーキングに次いで体操と並び2番目に多い数字でした。
なお、厚生労働省1)によると、運動習慣者とは、「1回30分間以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している人」と定義されています。
週1回の筋力トレーニング効果
石井2)によると、
1週間に1回の頻度では「筋力は上がって落ちて元に戻るといった繰り返しで、トレーニング効果があらわれない」と一般論ではいわれますが、実はそうではなくて、1週間に1回のペースでやっていても、身体の適応は、おそらく1週間に1回やることがちょうど良いペースとなるようなサイクルに入ってくれます。実際に大学で1週間に1回の体育実技の時間にトレーニングをさせるような場合でも、きちんとやっていけば学生の筋力はかなり伸びてきます。
とのこと。
ヘティンガー3)によると、 アイソメトリックトレーニングにおいては、週1回のトレーニングは週7回トレーニングしたときの30%程度の筋力向上率が見られたとしています。
また、一定期間実践したトレーニングを中止した後の筋力の変化を調べた実験では、毎日トレーニングを行った場合、短期間でかなり向上した筋力が、トレーニングを中止すると比較的短期間に元の筋力に戻ることが観察されたのに対し、週1回のトレーニングを行った場合、筋力向上は緩やかですが、トレーニング中止後は比較的長期間かけて緩やかに減少していったことが観察されたとのこと。
内田4)は、女子大学生を対象に、週1回の授業で行った8週間のレジスタンストレーニング(10種目、50%max以上で15回2セット)による周径囲と最大挙上重量の変化について報告しています。
それによると、周径囲には一部では有意差が見られたものの、全体的にはあまり効果がなかったとのことですが、除脂肪体重と最大筋力の増加が認められたそうです。
また、同じく内田ら8)は、短期大学生の男女35名を対象に、週1回の体育授業において、6種目のサーキットトレーニングを3セット実施したところ、30秒間の最大反復回数と最大跳躍高に有意な増加が認められ、さらに運動後の快感情の改善効果も示唆されたとのこと。
林ら5)は、大学1年生の男女を対象に、授業の中で10週間に亘って、ベンチプレス、スクワット、アームカールと学生が選択した種目(マシン含む)3種目、合計6種目を10RMの負荷で(スクワットは20RM)行ったトレーニングが筋力に与えた影響について報告しています。
それによると、すべての被験者において、形態には変化をもたらさなかったものの、ベンチプレスとアームカールの1RMが10%以上増加したという結果でした。
磨井ら6)は、男子大学生47名を対象に、週1回90分のフィットネス授業の中で、6、7週間をトレーニング期間として、運動部に所属する運動群と運動習慣のない一般群に分けてトレーニング効果を調べています。
方法は、スロートレーニング3種目をそれぞれ8回を最低1セット(約10分)とウエイトトレーニング16種目(約60分)をそれぞれ70%1RMの負荷で10回を最低1セットという内容で行われました。
結果は、体重と体脂肪率は、一般群は減少したものの、運動群では有意な変化がみられず。また、全身持久力は、一般群、運動群ともに変化はなかったとのこと。さらに、筋力は一般群、運動群ともに有意な増加を示しました。(増加率に群間の差はなし)ただし効果の大きさは小さかったそうです。
野坂ら9)は男子大学生15名を対象に、伸張性と短縮性のトレーニング比較を週1回のトレーニングで行っています。
方法は、最大等尺性上腕屈筋力(肘関節90度)の50%負荷で、ダンベルカールを10回3セット、一方の腕はエクセントリック(伸張性)トレーニングを、他方の腕はコンセントリック(短縮性)トレーニングで、週1回、8週間行っています。
結果は、コンセントリックトレーニング側が15%(2.5kg)の筋力増加、上腕部周径囲は0.6㎝、エクセントリックトレーニング側は6%(1.0kg)の筋力増加、上腕部周径囲は0.9㎝でした。上腕部のBモード超音波画像の変化は、エクセントリックトレーニング側の方が、筋厚の増加とエコー強度の増加も大きい結果となりました。
まとめ
以上、筆者が調べた範囲で分かった週1回の筋力トレーニング効果をまとめると、
- 筋力向上は緩やかであるが認められる。
- 10週以内の短期間では形態への変化は認められないとする報告と筋厚の増加が認められたとする報告がある。
- 身についた筋力は比較的維持されやすい。
- 快感情の改善効果が示唆されている。
といったところでしょうか。
引き続き継続して調べてみたいと思います。
平成28年2月15日更新
平成30年9月14日更新
令和3年12月1日更新
文献
1) 厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室 「健康日本21」最終評価 2011. p.52
2) 石井直方著 レジスタンス・トレーニング 1999
3) ヘティンガー著、猪飼道夫・松井秀治共訳 アイソメトリックトレーニング―筋力トレーニングの理論と実際 1970
4) 内田英二 女子大学生における週1回のresistance trainingによる最大挙上重量および周径囲の変化 国学院短期大学紀要第18巻 2000
5) 林直亨、宮本忠吉 週1回の大学授業における筋力トレーニングが筋力に与える影響 体育学研究54:137-143,2009
6) 磨井祥夫、柳川和優 週1回の授業におけるレジスタンストレーニングが大学生の筋力に及ぼす影響 広島体育学研究第39号 2013
7) スポーツ庁 スポーツの実施状況等に関する世論調査(令和2年11~12月調査)
8) 内田英二,神林勲 週1回8週間のサーキットトレーニングが大学生の体力および感情に与える影響 体育学研究51:11-20,2006